「災害時に保健師は何をするのか」——教科書で学ぶことと、実際の現場は全く違います。私は東日本大震災で津波の被害を受けた地域に、新人保健師として採用されました。その経験から、災害時の保健師の役割をリアルにお伝えします。
津波被災地への赴任
東日本大震災では、沿岸部を中心に甚大な津波被害が発生しました。私が採用されたのは、まさにその被災地域の自治体でした。
新人保健師として右も左もわからない状態で、未曾有の災害対応に携わることになりました。
避難所での活動
小学校・体育館が避難所に
地震・津波によって自宅を失った住民が、地域の小学校や体育館に身を寄せていました。
市役所職員は日勤・夜勤のシフト制を組んで、避難所の運営に当たります。保健師もその一員として、住民の健康管理を担いました。
心身の不調が続出
慣れない避難所生活は、住民の心身に大きな負担をかけます。
- プライバシーのない集団生活によるストレス
- 不規則な食事・睡眠
- 先の見えない不安からくる精神的疲弊
- 持病の悪化(糖尿病・高血圧など慢性疾患の管理が困難に)
心身の不調を訴える方が非常に多く、一人ひとりの状態を把握しながら対応することが求められました。
仮設住宅への移行後も支援は続く
時間が経つにつれ、住民は避難所から仮設住宅へと移っていきます。しかし、支援が終わるわけではありません。
仮設住宅に移った後も、保健師による健康状態確認のための巡回は継続します。
仮設住宅での生活は、今度は「孤立」という新たな問題を生みます。狭い空間でのひとり暮らし、地域コミュニティの分断——精神的健康への影響は長期にわたります。
避難所フェーズとは違う課題に向き合い続けることが、被災地の保健師に求められました。
災害時保健師に求められること
マニュアルの整備
東日本大震災の経験をもとに、現在は災害時保健活動マニュアルが各自治体で整備されています。当時と比べて、動きやすくなっている部分は多いと思います。
それでも「想定外」は起きる
ただし、災害はマニュアル通りには進みません。
規模・種類・地域によって状況は全く異なります。想定外の事態に臨機応変に対応できる力が、災害時の保健師には不可欠です。
現場で判断し、動ける実践力を平時から養っておくことが大切です。
保健師という仕事の本質
この経験を通じて、保健師という仕事の本質を学びました。
| 場面 | 主な役割 |
|---|---|
| 🏫 避難所 | 住民の健康把握 / 高血圧・糖尿病などの慢性疾患管理 / 精神的不調への支援 |
| 🏠 仮設住宅 | 定期的な巡回訪問 / 孤立住民の早期把握 / 継続的な健康管理 |
| 📋 平時(日頃) | 災害時マニュアルの整備 / 地域住民との信頼関係づくり |
| 🚨 有事(災害時) | 臨機応変な現場判断 / 医師・福祉・行政など多職種との連携 |
保健師の業務は多岐にわたります。日常業務だけでも母子保健・成人保健・介護予防など幅広く、そこに災害対応が加わる。本当に大変な仕事です。
しかしその分、地域全体の健康を支えるやりがいは他の職種では味わえないものがあります。
これから保健師を目指す方へ
保健師を目指している方、特に行政保健師を志望している方には伝えたいことがあります。
「想定外」に備えるのも保健師の仕事です。
教科書や研修で学ぶだけでなく、実際の地域住民と関わりながら、現場の感覚を磨いてください。災害はいつ・どこで起きるかわかりません。平時の積み重ねが、有事の対応力につながります。
この記事は東日本大震災被災地での実際の保健師勤務経験をもとに執筆しています。